走り込みは本当に必要?球速アップに必要なトレーニングとは

「あなたのチームでは、まだ長い距離の“走り込み”がメインの練習になっていませんか?」

もちろん、走り込みがすべて無意味だとは思っていません。ただ、“野球という競技特性に合ったトレーニング”を再考する必要があるのでは?

この記事では、「野球は瞬発系の動きを求められる競技である」という視点から、長い距離の走り込みは必要なのかどうか、僕の意見を述べていきます。

「野球は瞬発力のスポーツ」

野球は、投げる・打つ・走る・守る、すべてのプレーにおいて「一瞬の力」が求められるスポーツです。

その多くは短時間で高出力を発揮する、いわば“瞬発力の連続”です。にもかかわらず、いまだに多くの練習では長い距離走を走る「持久力系の走り込み」が多く行われていると感じます。

実際、YouTubeなどで強豪校の練習風景を見ていても、何本も長い距離を走っているシーンをよく目にします。でも、本当にそれが野球のパフォーマンス向上につながるのでしょうか?

たしかにスタミナをつける意味では走り込みも必要かもしれません。ただ、それが野球のパフォーマンス向上に本当に直結しているのか、一度立ち止まって考えてみる必要があると思っています。

「実際の現場で感じた違和感」

私自身、高校時代の先輩投手(中学時代は地元では上手いと言われていてスゴイ選手になると思っていた)が毎日のように長距離の走り込みをしていたのを見てきました。でも、その結果、球速が上がったかというと……むしろ逆だったように感じます。腕の振りも鈍く球速も出てなく肝心の投球に結びついていない印象でした。

また、知り合いのプロ野球選手のパーソナルトレーナーからは「野球は10:0で瞬発系トレーニングでいい」と聞いたことがあります。その言葉に非常に納得しました。

「僕の考えは理解してもらえなかった」

かつて私が小学生のチームのコーチをしていた時にも他の指導者の方に「野球は瞬発系だから、長い距離の走り込みではなく瞬発力トレーニングを多くした方がいいのでは」と伝えましたが、理解してもらえませんでした。練習の締めには400m走を10本走るメニューをよくやっていました。

選手の野球経験のあるお父さんたちにも自主錬練習をやるなら瞬発系の内容をメインにやった方がプレーに繋がりますよと話をしても食いつきは良くなかったです。

また、近くの中学校の野球部の子からは「練習で2、3kmの走り込みがあります。」といったのも聞きました。

「野球に必要なのは瞬発力の速筋(白筋)を鍛えるトレーニング」

筋肉には大きく分けて以下の2種類があります。

  • 速筋(白筋):瞬発力を発揮する筋肉。素早く強く動く場面(ダッシュ・ジャンプ・投げる・打つなど)に使われます。
  • 遅筋(赤筋):持久力を支える筋肉。長時間動き続ける場面(マラソンなど)に適しています。

野球は明らかに瞬発力のスポーツです。したがって、速筋の働きを高めるトレーニングを中心に行うべきです。

ところが、長距離走や持久力系のトレーニングを繰り返すと、身体は「持久力に適応」してしまい、遅筋の割合が高まっていく可能性があります。つまり、野球に必要な“速筋優位の身体”から遠ざかってしまうということが考えられます。

「野球の動きに合わせた走りの距離」

プレーを見ても、ベース間の距離は約27m。ベースを一周しても110m弱です。

つまり、110mの距離を何百メートルも超えるような長い距離を多く走ることは、野球の動きとはかけ離れていく可能性があります。200m走、400m走、800m走、1500m走、数kmの走り込みは全くするなとは言いませんが割合は少なめの方がいい思います。

「具体的な瞬発系トレーニングの例」

  • 短距離ダッシュ(1m・3m・5m・10m・30m・50m・110mなど、距離を変えながらのダッシュ)
  • ラダートレーニング
  • ジャンプ系(その場ジャンプ、ボックスジャンプなど)
  • 階段ダッシュ(数十メートル)
  • 走り幅跳び・両足ジャンプ
  • 縄跳び(二重飛びや三重飛び)

などが挙げられます。

※選手の体調や年齢に応じて強度や回数を調整しましょう。

「瞬発系の持久力も大切」

瞬発的な動きを1回だけでなく、試合中に何度も行える力が必要です。

また、**瞬発系の強い動きを何度も繰り返せる“瞬発系の持続力”**も必要です。

これは、瞬発系のトレーニングの回数を繰り返し行うことで自然と養われていくと考えます。

とはいえ、瞬発系のトレーニングをメインにしたとしても持久系の要素がまったくないという訳ではありません。

実際には、アップの段階で軽いジョッグを行ったり、練習と練習の合間の移動、ポジションにつくまでの移動などジョッグで移動する場面が多々あります。そういった形で持久力系のトレーニングは自然とできていると思います。

「アップはゆっくり、メインは瞬発系で」

もちろん、準備運動として軽いジョグや動的ストレッチなど、ゆっくりとした動きから身体を温めることは大切です。ただ、それはあくまでも“準備”の話です。メイントレーニングは速筋(瞬発系)を刺激する内容にすることが必要です。

「昔の常識を疑ってみよう」

「走り込めば球速が上がる」「長距離を走ればスタミナがつく」といった昔ながらの発想だけに頼るのではなく、選手の将来を考えたうえで、本当に必要なトレーニングを取り入れていく必要があります。

「最後に」

野球は瞬発系の競技です。

競技特性に合ったトレーニングを意識するだけでも、プレーの質は大きく変わっていきます。

それぞれの競技の特性に合ったトレーニングを行うこと。

その競技が瞬発系なのか、持久系なのか、あるいはその中間なのかを理解した上でメニューを選ぶこと。

それだけでも、プレーの向上やパフォーマンスの質が大きく変わってくると私は思います。

なので、野球は瞬発系の競技です。

その特性を理解し、トレーニングに活かしていきましょう。

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