昔ながらの「正面で捕れ」「体で止めろ」という守備の教え。実はそれが、子どもたちの野球離れやケガの原因になっているかもしれません。この記事では、今だからこそ見直したい守備指導の考え方についてお伝えします。
野球やソフトボールでは、昔からよく言われている言葉があります。
「ボールはすべて正面に入って捕れ!」
「体で止めてでも前に落とせ!」
確かにこれは、かつては「基本」として多くの指導現場で教えられてきましたし、僕自身も選手だった頃には何度も言われてきました。
しかし、今でも野球やソフトボールの練習や試合を見ているとすべての打球に対して「正面で捕れ!」と耳にすることが多いです。
実際に息子と自主練をしたり自身がコーチとして他の指導者や子どもたちと接する中で、「正面で捕ること」にそこまでこだわる必要があるのか?と疑問に思う場面は何度もありました。
今回は、そんな「正面で捕れ」という教えに対する僕の考えをまとめてみたいと思います。
1. 「すべて正面で捕れ」は本当に正しいのか?
昔は「すべて正面で捕るのがが基本」「エラーするくらいなら体に当てて前に落とせ」と言われていました。
でも、それが本当にベストな守備の形なのかは、今の時代改めて考える必要があります。
例えば…
- 正面ではなく体の横や逆シングルで取った方が、その後の送球がスムーズでアウトになりやすい場面も多い
- 打球の勢いが強いと、体で当てて前に落としても痛い思いをする
- 難しい打球をグローブではなく体で止めようとするのではなく、難しい打球もグローブで捕れる練習をすればいいのでは?
現代野球では、状況に応じた柔軟なプレーが求められており、「すべて正面で取る」ことにこだわるのは、もはや時代遅れとも言えます。
2. 「体で止める」ことのリスク
「体で止める」ことは、安全面でも問題があります。
ボールの当たりどころが悪ければ、単なる痛みでは済まないこともあります。
- 腕や脚など体に当たって打撲や骨折
- 顔に当たって視力低下や歯の損傷
- 頭に当たれば脳しんとうや命の危険
- 心臓に当たったら、AEDが必要になるような命の危険な状態
特にまだ筋肉や骨も出来ていなくて体が未発達な小学生や初心者の子どもたちに、体で止めろと教えるのは危険が大きすぎると感じます。
特に野球やソフトを始めたばかりの頃は安全に楽しめるスポーツであるべきで、そこまでのリスクを負ってまで「体で止めろ」と言う必要が本当にあるのでしょうか?
3. 僕が教えるときに大事にしていたこと
僕は息子や、教えている子どもたちに対して、「体で止めろ」と言ったことはありません。
その代わりに、いつも伝えていたのは、
「グローブで取ろう」
「グローブにしっかり入れるようにしよう」
「まずは捕れなくてもいい。グローブに当てることから始めよう」
ということです。
もちろん、正面で取った方がいい場面もありますが、逆シングルや横で取ることでアウトにできる場面も多くあります。
昔のように「正面以外はすべてダメ」と決めつけるのではなく、正面で捕ることを含めたいろんな捕り方をした方が、プレーの成功率やスムーズなプレーや選手自身の技術向上にもつながると僕は感じています。
4. 「正面で捕れ」は技術の成長を妨げる?
正面だけにこだわってしまうと、かえって守備の幅が狭まり、技術の成長を妨げることもあります。
- 正面だけでなくいろんな取り方ができる技術
- 逆シングルの動き
- 瞬時に送球動作に繋がる捕球体勢の状況判断能力
これらは、練習の中で状況に応じた捕球を選手自身が考えて反復して練習し瞬時にできるように身に付けていくものだと思います。
「全部正面!」と決めつけてしまい状況に応じた捕球体勢ができないと、中学・高校とステージが上がった時に守備のプレーの幅が狭くなると感じています。
5. 特に初心者・小学生には注意したいこと
特に注意したいのが、野球やソフトを始めたばかりの小さな子どもたちへの指導です。
- 最初はボールが怖くて体の横で取ることもあります
- 体に当たって痛い思いをすると、「もうやりたくない」と思ってしまうかもしれません
- 怖さからくる萎縮は、プレーの質を下げるだけでなく、野球そのものが嫌いになる原因になります
こうした体験を子どもたちにさせないためにも、最初の段階では「正面で捕れ!」「体で止めろ!」といった昔ながらの指導ではなく、怖がって体が逃げて横で捕ってもいいからまずはグローブで楽しく取れるようになることを目指すべきだと感じています。ボールを捕る時に痛い思いをしたり、あまりにも取り方を制限されたら果たして子供たちは野球を楽しいと思うでしょうか?野球を続けて行きたいと思うでしょうか?こういったことも、野球人口や野球離れに繋がっていく一つの要因と考えています。
そして、始めは怖がっていても子どもが成長し、体が発達してきたときに、自然と正面で取るプレーもできるようになっていくものです。
【まとめ】
野球の守備は、シンプルに考えるとボールを取ってアウトにすることが目的です。
その「過程」にこだわりすぎて、子どもを怖がらせたり、可能性を狭めたりしてはいけないと思います。
中学・高校と上のステージで野球を続けるのであれば、正面も含めた色々な捕り方が出来ていた方が選手としての幅やプレーの幅が広がっていきます。
正面だけが正解ではない。
これからの指導は、柔軟で、安全で、そして子供たちが野球をしたい・続けようと思うようなやり方であるべきだと私は思います。
【筆者プロフィール】
ナイスバッチ
プレーヤー・保護者・指導経験を活かし、柔道整復師・鍼灸師の視点から野球の疑問や改善点を発信。未来の野球を考えるナイスバッチです。
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